【5386(株)鶴弥】「攻めのMBO」と「守りの東証廃止」は何が違う?パリミキと鶴弥にみる経営の“体温差”

シケモク企業図鑑

今日も今日とてシケモク探し。 シケモクハンターのきくちゃんです。

低PBR好財務の会社にも本当にいろんな個性があるなと思う今日この頃です。

デフレ住宅と、斜陽産業ど真ん中の「三州瓦」

日本の住宅業界、長く続きすぎたデフレと不景気のせいで、「とりあえず安く、シンプルなデザインで、洋風で……」というニーズがすっかり蔓延してしまいました。瓦だった屋根は、安いガルバリウムやスレートになり、吹付で左官職人が仕上げていた吹き付けの壁は、パネルとコーキングになり、軒天は短くなり、木材は無垢から合板やMDFになり・・・昔は50年100年耐久していた日本の家の寿命はどんどん短くなっていっている印象です。失われた30年の不景気とデフレ、それに伴う利益率の縮小により住宅メーカーがコストカットに全振りするしかなかった(時代がそれを選んできた)結果でしょうか。

そんな中で大逆風をモロに浴びているのが、粘土瓦(日本瓦)の業界です。

今回ご紹介するのは、斜陽産業ど真ん中とも言えるメーカー、(株)鶴弥(5386)。やっぱり瓦と言えば「三州瓦」ですが、そのトップメーカーです。

どんなに干上がってボロボロになっていることだろうかと彼らの足元の数字をのぞいてみると、驚くほどの「超・ガチガチ好財務」と、生き残りをかけた必死のサバイバル戦略が見えてきました。

鶴弥の基本データと「きくちゃんチェック」

まずは、私が気になった主な指標を整理します。

指標(2026年現在)数値・状況きくちゃんの視点
自己資本比率79%文句なしの超高水準!
利益剰余金67億円会社に貯まった「過去の栄光」と蓄え。
現金同等物14億円有利子負債(9億円)を引いてもお釣りが出る実質無借金。
営業利益率2.6% 〜 3%製造業平均(5%)より低く、儲かる業種ではない。
配当利回り2.73%悪くない水準。
PBR0.23圧倒的な割安(解散価値を大幅に割れている)。

業績自体は「ほぼ横ばい」。決して成長産業ではありません。

しかし、

お金がめちゃくちゃ余っている(利益剰余金67億円、現金14億円)

株価が安すぎる(PBR 0.23倍=会社を丸ごと買って解散させるだけで大儲けできる状態)

東証の上場をやめた

という条件を見たとき、私の脳裏に投資家としての「下心」がよぎりました。

💡 「これ、MBO(経営陣による買収・非上場化)して、株を高値で買い取ってくれるパターンじゃないの……?パリミキ的な?」

一瞬、あのパリミキのようなイリュージョンを垣間見たのですが、彼らの最近の動きを見るうちに、「あ、この会社は、違うな」と気づかされたのです。パリミキには「これからも攻める!会社を変革して今のメガネ市場に食い込んでいくぞ!(日本のメガネは安くて高品質でインバウンドにも人気な意外な成長産業)」という外に向けたノッてる感がありますが、鶴弥は「うまくやって絶対に損しない」感(優秀な大地主的な守りのオーラ)に溢れているのです。

1. 「攻めのMBO」か「守りの東証廃止」か

決定的な違いは、上場をやめる目的と、その後の未来への姿勢です。

項目パリミキ(攻めのMBO)鶴弥(守りの部分廃止)
何をしたか市場から株をすべて買い戻し、完全に非上場化した。東証だけをやめて、地元の名証には上場を残した
やめた目的短期的な株価や株主の目を気にせず、ドカンと大胆な店舗改革や投資を身軽に進めるため誰も株を買ってくれない東証の重い維持コストをバッサリ削って、無駄をなくすため
お金の動き創業家や経営陣がリスクを背負って外から資金を集め、世の中の株を高く買い取った。会社の使っていない土地を売って、とりあえず社内にキャッシュ(2.6億円)を引っ込めた。
  • パリミキのノってる感:「世間の顔色をうかがうのはやめだ!自分たちの信じる最先端のメガネ店を作るために、一回市場から抜けて大改革するぞ!」という、未来に向けた「脱皮」のエネルギーがありました。
  • 鶴弥のプライベートカンパニー感:「市場が縮小しているから、これ以上余計な経費(東証の維持費)は払いたくない。でも上場企業の看板は地元の信用として一族のために残しておこう」という、過去の遺産をすり減らさないための「防衛」のエネルギーです。

2. 「世襲のしがらみ」から抜けているか

もう一つの大きな違いは、「創業者ファミリー」と「会社」の距離感です。

  • パリミキ:かつては創業家(多根家)の色の強い会社でしたが、近年は古いしがらみを脱ぎ捨て、時代の変化(格安メガネ店の台頭など)に合わせて泥臭い現場改革や新業態へのシフトをガシガシ進めていました。MBOという大勝負に出たのも、「会社をもう一度輝かせるため」という強い覚悟が表に出ていました。
  • 鶴弥:確かに今年、54歳の生え抜きである満田新社長を据えて若返りを図ってはいます。ですが、結局会長と社長の二人体制で経営すると発表しています。現在の四季報を見ても、創業家の鶴見会長が約20%の株を握り、さらに一族の資産管理会社である「(有)トライ」が上位株主にガチッと居座っています。今回の東証廃止の動きを見ても、若い新社長に「これからの新しい鶴弥を作って世界へ打って出ろ!」と全権を託したというよりは、「この縮小していく厳しい瓦業界の中で、一族の資産と看板を傷つけないように、上手いこと現場のやりくりを頼むよ」という、ファミリーの意向の枠から一歩も外に出ていない雰囲気が漂います。

きくちゃんの学び

鶴見家の癖が、硬くて重すぎる。やっぱ、瓦なだけに。(笑)

三州瓦という伝統や製品自体は素晴らしいし大好きだけど、株として「下心」を持って付き合うには、ちょっとお相手のガードが固すぎました。

いくらお財布(財務)が分厚くても、家主ががっちり鍵を閉め込んで動く気がないなら、外の人間(投資家)がその恩恵にあずかるチャンスは当分なさそうです。

おまけ 「カワラッパ」が語る鶴弥の真意

鶴弥のHPを見ていて面白いものを発見しました。鶴弥のイメージキャラクター「カワラッパ」です。

鶴弥に、昔から住んでいると言われる伝説の生き物、「カワラッパ」

その冷たい眼差しですべてを伝える能力を持つ。

もともとは頭に皿があったが、割れてしまい、鶴弥の瓦が頭になじんだため、そのままになっている。

愛嬌は全くない。泳ぎは苦手。逃げ足は速い。日向はキライ。

Twitter やってます。

カワラッパ、Twitterやってんのかよ?スマホ防水かよ。(笑)

このカワラッパの文章が、

MBOをするわけでもなく(愛嬌は全くない)、東証を捨てて(日向はきらい)、名古屋にスライドして逃げていった(逃げ足は速い)鶴弥の姿と重りました。

まさに裏社訓。

今まさに冷たい眼差しで全てを告げられました。

鶴弥は、「バリュートラップ株」です。

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