私の賃貸収益物件(以下2号物件)についてです。
2号物件は築50年の昭和の物件です。5LDK2S+物置+めちゃくちゃ庭広いという超個性派の物件です。
前面道路へ続く3メートル幅の通路が隣家との「共同持分」という、実需(マイホーム)向けには少し敬遠されるマイナスポイント。しかし、これこそが賃貸投資物件として私の元に購入のチャンスが回ってきた決め手でした。
元の持ち主は病院の勤務医をされていた方で、奥様とお子様2人と暮らしていたそうです。建物自体は当時のこだわりが詰まった注文住宅で、骨組みのしっかりした在来工法の和風建築。お子様が独立しご夫婦が他界された後、遠方にお住まいの姪御さんが相続され、手放す意向で不動産会社に出ていたところをご縁があって購入させていただきました。
経年劣化で床のベニヤが湿気でブカブカしていたためフローリングを増し張りし、畳の部屋は洋室へ変更、傷んだクッションフロア(CF)も一新。古くなった作り付けの化粧台は解体・撤去して市販の独立洗面台を新設し、脱衣所をゆったり使えるように改善しました。 全面砂壁だった室内は、お世話になっているベテラン大工さんと二人で2〜3ヶ月がかりでひたすらDIYで漆喰塗り。5部屋と2つの納戸を白く仕上げる作業は果てしなく大変でしたが、その分たくさんの愛着と工夫が詰まった大切な「2号物件」です。
そんな2号物件の顔ともいえるのが、昭和の面影を残す木製の玄関引き戸。『サザエさん』の磯野家に出てくるような趣のある扉です。 ただ、この引き戸には令和の感覚では驚く特徴がありました。なんと「内側からしか鍵がかからない」のです。外から施錠できるのは勝手口のみ。
今の暮らしからすると「えっ、どういうこと!?」と思ってしまいますが、背景を紐解くと納得がいきます。 昭和の時代、フネさんもサザエさんも専業主婦として常に家にいました。いわばお母さんが「家庭のセコム」だった時代です。お母さんの出入り口はいつも勝手口。カツオやワカメが帰ってくれば「おかえり」と迎え、波平さんやマスオさんが帰宅すれば「お帰りなさいませ」と玄関まで三つ指をついて出迎える。そうした家族像が前提なら、「正面玄関はお母さんが内側から開け閉めするもの」で何一つ不都合がなかったわけです。
時代は昭和から平成、そして令和へ。 築約50年が経ち、共働きが当たり前になった今、家族それぞれが鍵を持ち、自分で開け閉めして出入りするのが標準です。この古い木の引き戸の風情を活かしたまま、外から施錠できるようにアップデートできないものかとずっと頭を悩ませていました。
転機となったのは、今年訪れた金沢の「ひがし茶屋街」での発見でした。 紅殻(べんがら)格子の美しい町家が連なる街並みを歩いていたとき、古い木製引き戸の玄関に、ピカピカの新しい鍵が取り付けられているのを見つけたのです。メーカーは信頼の「MIWA(美和ロック)」。
「これをつければ、2号物件の玄関も外から施錠できる!しかも防犯性の高いディンプルキーでいけるはず!」
旅から戻り、さっそく物件近くの鍵屋さんに相談しました。職人さん曰く、「引き戸の框(かまち)の木幅が6cm以上あれば穴を開けて加工できるけれど、それ以下だと木が割れてしまうから施工不可」とのこと。ドキドキしながら現地で採寸すると……6cmクリア!
50年分の経年で木が痩せ、戸車も歪んでいたため、戸車の交換や建付けの微調整も一緒にお願いしました。施工費用は調整込みで26,000円。 後日仕上がりを確認してみると、重かった扉が驚くほどスルスルと滑り、新しい鍵が「パシッ!」と吸い込まれるように気持ちよく閉まりました。やはりプロの技術は素晴らしいと実感した瞬間です。
玄関ドアごと新調すれば本体だけで15万円以上、工事費を含めると20万円前後は下りません。コストを大幅に抑えられただけでなく、何よりアンティークな木製引き戸の味わいをそのまま受け継ぐことができたのが嬉しい収穫でした。
長年の懸案だった玄関鍵を最新の防犯仕様に整え、戸車が壊れていた網戸も新調。これにて準備は万全、あとは素敵な入居者さんとのご縁を待つばかりです。 この家で、長く心地よく暮らしてくださる方に巡り会えますように。


