間取り図には載らない恐怖。水回りピカピカの築浅平屋を見送った理由

他人のゴミは私の宝。シケモク不動産投資家きくちゃんです。

先週ど田舎の山林と江戸時代から住んでるような農家しかいない調整区域に築浅の平家が売りに出ていたので内見に行ってみました。「ど田舎の平屋の家=素敵なスローライフ」を思い描いて行ったのですが、色々予想とちがって面白かったのでご報告します。

<時代の激変と共に売買される宿命の家>

不動産屋さんから送られてきた謄本を見たところ、3ページにわたり昭和から平成の日本の激動のドラマが謄本上に繰り広げられていました。

1933年(昭和8年):A子さんが土地を購入 1929年の世界大恐慌に端を発した「昭和恐慌」の最悪期からは脱しつつあったものの、社会的な歪みや軍部の台頭が決定定的となった激動の時期です。工業や輸出が回復する一方で、繭(まゆ)や米の価格暴落、東北の冷害などが重なり、地方の農村は悲惨な飢餓状態にありました。そんなタイミングでA子さんがこの土地を手に入れた背景には、おそらく生活に困った農民からの債務回収(借金のかた)などの事情があったのではないかと推測されます。

1988年(昭和63年):A子さんの娘さんが相続 ブラックマンデーの打撃をいち早く乗り切った日本が、本格的なバブル経済へと突入した年です。青函トンネルの開業、東京ドームの完成、瀬戸大橋の開通など、日本中が華やかな好景気に沸いていました。

1990年(平成2年):A子さんのお孫さんが相続 華やかだったバブルが一転して崩壊を迎え、株価が急落し始めたターニングポイントの年です。

1998年(平成10年):お孫さんが家を新築 バブル崩壊後の銀行倒産が相次ぎ、「平成大不況」が直撃した年です。戦後最悪の経済状態に陥り、経済成長率は過去最大のマイナスを記録。企業のリストラや倒産によって失業率は悪化し、デフレスパイラルの危機が叫ばれるなど、強い雇用不安が社会を覆っていました。

2006年(平成18年):お孫さん、住宅金融公庫から物件を差し押さえられる

2008年(平成20年):さらにアイフルからも差し押さえが入り、競売へ

2008年(平成20年):東京の業者が落札した途端に「リーマンショック」が到来 業者は税金が払えず、2ヶ月間差し押さえられるほど困窮したものの、なんとか持ちこたえます。

2010年(平成22年):リタイア後に田舎暮らしを望む、高属性の東京在住夫婦が購入 リーマンショック後の超低金利政策と、空前の田舎暮らしブームが重なった時期です。東京で高い属性を持つ現在(前)のオーナーが、別荘としてメガバンクでローンを組んで購入されました。

2026年(令和8年):そして、今ここ。 高属性のご主人が亡くなり、奥様もご高齢になられたため、東京に住む娘さんのもとへ引っ越すことに。それに伴い、田舎の家を売却して処分したいという流れです。

普通の物件なら謄本は1枚程度で収まるものですが、この物件の謄本はさまざまなドラマが刻まれており、なんと3ページも続いていました。まさに「時代の激変を体現してきた家」です。

ここまで歴史の荒波を綺麗に受けていると、「今年売りに出されたということは、また世界的な大事件が起きる予兆なのでは……?」なんて邪推をしてしまうほどの凄みがあります。

【間取り図には載らない、恐怖の『びゅーん!!』地帯】

内見に行って、築浅の建物とユニットバス、新品の独立洗面台などに胸が躍ったのも束の間。玄関のドアを開けて外に出た瞬間、すべての血の気が引きました。

目の前の県道、歩道がないどころか、道路の端っこにあるはずの『あの白い線(白線)』すらありません。

敷地を一歩出たら、そこはもう直でアスファルトの県道。 目の前を、車やトラックが「びゅーん!!」と猛スピードでかすめ飛んでいくんです。ドアを開けるたびに、鼻先をかすめる爆風と命の危険を感じるレベル。

これから164億円かけて近くの山林を切り開いて工業団地ができるそうですが、そうなればこの目の前の道路は、さらに大型トラックや通勤車が激しく爆走する「超・危険地帯」になることが確定しています。

数字の計算だけでは分からない、現地に足を運んで五感でリスクを吐き出すことの大切さを、身をもって学んだ社会科見学でした。

おどろおどろしい謄本にもドン引きしつつ、トラックが通るたびに揺れるし、玄関から駐車場に行こうとするたびに県道を通る車にひかれそうになるし・・・やはり今回は見送るという決断に至りました。

最初に地図を見た段階では、目の前がコンビニで便利だったり、工業団地ができたらそこで働く人たちが事務所に使ってくれるかも・・・とか、寮にどうかな・・・などの金の計算だけを考えた「スケベ心」的なモチベーションが当初ありました。しかし実際に行ってみて、玄関をでて駐車場に移動しようとするたびに車に吹き飛ばされそうになり、私の購買意欲も吹き飛ばされました。

家は、人が住むもの。

だから、やっぱり利回りだけじゃないのよね。

心がときめかない物件は買っても後悔するから、買っちゃダメ。

「スケベ心」のみで動くと逆に必ず計算が狂う。

入居者さんの「心地よさ」「便利さ」「安心安全」と「利益」のバランスが、合う物件だけを買うのが後悔しない長く運用できるお買い物をする鍵のような気がします。

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