私は現在、自営業として機械部品の輸出や手工業製品の製作・販売を行っています。そして、そこで上がった利益を運用して増やし、子供の将来の学費や老後資金として備えています。さらに、母として2人の子供を育てて暮らしています。つまり、「社長」「投資家」「母」という3つの仕事を切り替えながら生きているのです。
自分の会社を作ってから20年目、投資家として不動産投資を始めてからは約3年目、母親業は13年目に入ります。40代後半になり、自分のこれまでとこれからを考えたとき、どんなドラマティックでカリスマ性のある言葉よりも、シーモアさんの言葉がとても腑に落ちる今日この頃です。
じぶんの心と向き合うこと、
シンプルに生きること。
成功したい気持ちを手放すこと、
積み重ねることで、人生は充実する。
シーモア・バーンスタイン
1. 「じぶんの心と向き合うこと」=自分のスタイルを決める
どんな商品を取り扱うのか、どんな作品をつくるのか、どういうふうに売るのか。自分に合ったポジションを決めるためには、自分自身と向き合うことが不可欠です。「今売れてるから!」「流行ってるから!」という事実がヒントになることはあっても、最終的に「そのやり方がじぶんに合っているのか? そのものが好きなのか?」が合致していなければ、うまくいきませんし、続けることもできないと思います。
例えば、
- 部品の販売なら:安い雑貨を中国から大量に輸入して、量を捌(さば)いて儲けるのか? それとも、高額な機械部品を少量だけ日本からアメリカやヨーロッパに輸出して、少ない仕事量で利益を上げるのか?
- 不動産投資なら:現金で築古戸建てをやるのか? ローンを引いて新築マンション投資をやるのか?
- 株式投資なら:現物でシケモク投資をやるのか? 信用でグロース投資をやるのか? 長期投資か?あるいはデイトレをやるのか?
エミン・ユルマスさん風に言うと「自分のポジションをとる」ということです。どんなポジションであれ、自分に合っていればそれが正解だと思います。間違いがあるとすれば、自分を見つめることのないまま「今日はこのポジション、明日はあっちのポジション」とふらふら飛び乗ってしまうことです。それではそれぞれのポジションでの学びが蓄積されず、選択を誤ってプロジェクトごと失敗する確率を倍増させてしまいます。だからこそ、「何が自分に合っているのか」「無理なくできるのはどれなのか」を内観することは、とても大切なのです。
2. 「シンプルに生きること」=足るを知る
内観して「自分はこれでいこう」とポジションを決めたなら、あとは他の選択肢を「捨てる」のが良い選択です。脳を混乱させず、ストレスを減らすことにつながるからです。あれもこれもと手を広げず、ひとつのことに資金も時間も、脳のキャパシティや体力も集中させます。
20代の頃は、あれこれと散らかっても、それをすべて経験に変えていけるだけの潤沢な「時間」と「体力」がありました。しかし40代後半の今、時間は自分だけのものではありません。子供を育て、家事をこなし、30代で手に入れた「家族」という豊かな財産をメンテナンスすることにもエネルギーを注ぎたいものです。
また、体力面でも老眼が始まったり、ホルモンバランスの変化に伴って筋肉量が落ちていったりと、どうしても下り坂を迎えます。だからこそ、特に40代以降は本当に大事なもの以外を削ぎ落とし、残した大切なものにリソースを集中させることが重要になってきます。
3. 「成功したい気持ちを手放すこと」=すぐに「名声」や「利益」が爆誕しなくても続ける
シーモアさんはプロのステージピアニストでした。ピアニストや芸術家にとっての「成功」とは、一般的に「名声」や「人気」を指すでしょう。目標を掲げて頑張ることは素晴らしいことですが、その目標が完全に「他人の評価」になってしまうと、メンタルを病むサイクルに陥りやすくなります。
また皮肉なことに、「他人の評価を気にしながら表現している人」の気配をお客さんは敏感に察知します。そして、時に見下してしまうことさえあるのです。お客さんがお金を払ってまで見たいのは、自分たちがいる現実とは切り離された世界で「狂気のように没頭している人」や「独自の「世界観の住人」だからです。
もちろん、第三者的な厳しい目線で高いクオリティを俯瞰し、維持していくこと(品質管理)は非常に有益であり、怠ってはなりません。しかし、個性やブランド、自分というキャラクターの「確立」においては、他人におもねる気持ちを手放す方が、最終的に自分を深く愛してくれる人(ファン)を引き寄せることにつながる気がしています。
「成功したい気持ち」だけでモノを作ると、裏側で「成功できなかったらどうしよう」という不安も同時に発生してしまいます。それが厄介なところで、その不安な波長が「成功したいけれどできないかもしれない人」を見下したり、値切ってきたりするような、都合のいい客を引き寄せてしまいます。これこそが、一番避けたい事態なのです。
4. 「積み重ねることで、人生は充実する」=ストレスなく楽しくできていることに感謝して続ける
シーモアさんの言葉の結びが「成功を手に入れる」ではなく、「人生は充実する」という表現であるのが、本当に素晴らしいと感じます。「成功」は点であり、「充実」は状態(時間・空間全体)だからです。
例えば、1990年代後半から2000年代前半にかけて時代の寵児となった、ホリエモンこと堀江貴文氏のライブドアという会社があります。堀江氏が大学在学中に起業し、わずか10年足らずの間に資本金600万円の小さなベンチャーから時価総額数千億円規模の巨大企業へと急成長を遂げました。球団買収やニッポン放送の買収劇などで社会現象を巻き起こしましたが、2006年の逮捕によってその勢いは一気に急落しました。まさに、世間がいう成功とは「点」なのです。
成功する個人事業主やベンチャーは数多く存在しますが、10年後に生き残れるのは1割しかいないという統計もあります。一時は非常に羽振りの良かった不動産投資家や株式投資家が、市場の暴落のたびに静かに退場していくのもよくある話です。
不動産投資(そしておそらく株式投資)の世界でよく言われる言葉に、「とにかく一発退場を避けろ」というものがあります。「成功!」という名の「点」を追いかけるのではなく、退場しない健全で楽しい状態をずっと持続させていくこと。それはまるで命ある限り複利を受け取るスタイルの投資に似ているのかもしれません。「点」の成功ではなく、命ある限り収穫の恩恵を受ける生き方を目指す視点が「人生は充実する」というシーモアさんの言葉に集約されている気がします。


