【日本サバイバル列伝】第4回:日英同盟と「他人の金で勝った」日露戦争

〜世界の覇権国をスポンサーにして巨人を倒したレバレッジ外交〜

導入:小国・日本が世界最強の巨人に勝てた「裏の理由」

1904年、極東の島国・日本が、世界最大の陸軍大国・ロシア帝国に挑んだ日露戦争。

東郷平八郎の日本海海戦や、旅順要塞の激闘など、ミリタリーの英雄伝ばかりが語られがちです。

しかし、冷静に当時の国力差を見てください。

  • 人口: ロシアは約1億4000万人に対し、日本は約4600万人(約3倍)
  • 軍事費: ロシアは日本の数倍以上
  • 陸軍力: 世界最強と恐れられたロシア陸軍

普通にガチンコ勝負をすれば、日本は100回戦って100回負けるレベルの格差でした。

ではなぜ日本は勝てたのか?

答えはシンプルです。「世界の超大国イギリスとアメリカをスポンサーにつけ、他人の金と船で戦ったから」です。

当時の危機:迫り来るロシアの南下

シベリア鉄道を完成させつつあったロシア帝国は、満州(中国東北部)を実質的に占領し、朝鮮半島、そして日本へと触手を伸ばしていました。

ロシアに朝鮮半島を抑えられれば、日本の喉元に刃を突きつけられたも同然です。

国家滅亡の足音がリアルに迫っていました。

立ち回り:「光栄ある孤立」を誇るイギリスを口説き落とす

そこで日本が目をつけたのが、当時の世界の覇権国・大英帝国(イギリス)でした。

当時、イギリスは「世界最強の海軍を持つ我々は、他国と同盟など組む必要はない」という「光栄ある孤立」を国是にしていました。

しかし日本は、イギリスが世界各地(中央アジア、中東、中国)でロシアの南下に頭を悩ませているという弱点を見逃しませんでした。

日本はイギリスにこう持ちかけます。

「極東のロシア監視、イギリス海軍の代わりにウチが引き受けますよ。その代わり、後ろ盾になってくれませんか?」

イギリスからすれば、自分で血を流さずに極東でロシアを牽制できる便利なコマが手に入ることになります。

こうして1902年、日本はイギリスに国是を捨てさせ、歴史的な「日英同盟」を結ぶことに成功しました。

したたかポイント:戦費の半分は「NYとロンドン」で調達した

日英同盟を結んだことで、日本はとんでもない武器を手に入れました。「大英帝国の信用」です。

日露戦争の総戦費は約17億円(当時の国家予算の数年分)。日本単独では絶対に用意できない天文学的な金額でした。

これを解決したのが、日本銀行副総裁の高橋是清(たかはしこれきよ)です。

高橋はロンドンやニューヨークに飛び、金融街で外債(日本の国債)を売りまくりました。

「日本はイギリスと同盟を結んでいるから安心ですよ」「ロシア帝国の専制君主を倒しましょう」と宣伝し、ロシアのユダヤ人迫害に怒っていた米ユダヤ系富豪ジェイコブ・シフなどの協力を取り付けることに成功します。

結果どうなったか?

  • 戦費の約半分(約8億円)は、イギリスやアメリカからの借金で調達
  • 日本海海戦でロシア艦隊を全滅させた戦艦「三笠」は、イギリスの造船所で作らせた最新鋭艦
  • ロシア艦隊への石炭補給をイギリスが世界中の港で妨害し、航行を妨害

日本は、「イギリスのブランドと船を使い、英米の投資家の財布でロシアと戦った」のです。

結末:判定勝ちの瞬間にサッと幕を引くリアリズム

日本軍は現場で必死に戦いましたが、陸海ともに弾薬も兵力も完全に底をつき、国家破産寸前でした。

そこで日本政府は、完全勝利など目指さず、日本海海戦で勝った瞬間にアメリカのルーズベルト大統領に仲介を頼み、講和条約(ポーツマス条約)を結んでサッサと試合を終わらせました。

自国の実力を過信せず、大国の利害を巧みに巻き込んでレバレッジ(テコの原理)を効かせ、ギリギリの判定勝ちをもぎ取る――。

日露戦争は、日本のサバイバル外交の極致とも言える戦いでした。

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