みなさん、こんにちは。きくちゃんです。
四季報で「低いPBRで好財務の株」を探すのには、だんだん慣れてきました。 私のコツは、大きい文字の四季報をケチらず買って、心を無にして一枚一枚数字を追いながら、赤ペン(ポジティブ)と青ペン(ネガティブ)で線を引きまくることです。
そんな私の次なる課題は、この2つ。
- 「バリュートラップ株を見分けて避ける」(たぬき親父を見抜く技術)
- 「いつエントリーするのか」(10年、5年単位のサイクルを眺めて低いところで入る)
前回のINPEX(エネルギー関連)に続き、今回は私がマークしている「鉄鋼セクター」(日本製鉄・JFE・新日本電工・共栄製鉄・東京製鐵)を取り上げ、歴史とマクロ経済の流れから「仕込み時」を解剖してみます。
鉄鋼セクター(日本製鉄)の歴史的サイクル年表
鉄鋼の歴史を時系列で追うと、驚くほどダイナミックな波が見えてきます。
❶【天井】2007年:BRICsブーム・中国の爆発的爆食期(大天井)
- 当時の状況: 2008年の北京オリンピックを前に、中国が国中で猛烈なインフラ工事を開始。ビル、鉄道、ダム、自動車など、ありとあらゆる場所に鉄が必要になり、世界中の鉄を買い占めました。これにより世界中で深刻な「鉄不足」が発生します。
- 業績と株価: 鉄の価格は高騰し、鉄鋼各社は過去最高益を連発。旧新日本製鐵の株価は900円台後半まで急騰し、「鉄は国家なり」の栄光を取り戻したお祭りのピークでした。
- 現場のリアル: 実際の日本の現場では鉄が足りなくなり、国内の顧客が仕事を進められず大変困ったそうです。溶接業をやっている私の友人曰く、この教訓から「日本の鉄材料関係の会社は一定の在庫を確保する習慣」ができたとのこと。しかし、2008年のリーマンショックによる世界景気減速で、この大ブームは一転して大崩壊を迎えます。
❷【大底】2012年:超円高と「中国の過剰生産」地獄
- 当時の状況: 世界不況に加え、1ドル=70円台という歴史的な「超円高」が日本を襲いました。さらに、中国の鉄鋼メーカーが工場を建てすぎて「大量の安い鉄」を世界中にぶちまけたため、鉄の価格が暴落します。
- 業績と株価: 日本の鉄鋼メーカーは赤字に転落、株価は100円台前半(現在の調整前ベースで約200円台)まで売り叩かれ、「鉄鋼業はオワコン」と見放された暗黒期でした。
- 企業の教訓: この「天井からの崖下転落」という壮絶な経験により、日本の鉄鋼会社は内部留保を限界まで溜め込み、中国に振り回されるリスクをヘッジする備えを常に固めるようになりました。
❷-A【プチ天井】2015年初頭:アベノミクス円安&カンフル剤ブーム
- 当時の状況: 2012年末からの「アベノミクス」による猛烈な円安(1ドル=120円台へ)と日銀の異次元緩和が追い風に。さらに中国政府の大規模な経済対策(カンフル剤)も重なり、世界の鉄鋼需要が一時的に急回復しました。
- 業績と株価: 業績は一気に黒字へV字回復。株価は2012年の底値から約3倍まで駆け上がりました。
❷-B【プチ天井】2018年初頭:世界同時好景気&トランプ関税祭り
- 当時の状況: 「世界同時好景気」で自動車や機械が売れまくり、鉄の需要が再び爆発。さらに米国のトランプ大統領(当時)が「安全保障のために鉄鋼輸入に関税をかける!」と大騒ぎしたことで、世界の鉄鋼価格が吊り上がりました。株価も再び山を形成します。
❸【大底】2020年:コロナショックと自動車減産
- 当時の状況: 新型コロナの感染拡大により、世界中の自動車工場がストップし、建設工事も凍結。鉄の需要が文字通り「蒸発」しました。
- 業績と株価: 日本製鉄は巨大な赤字を計上し、無配(配当ゼロ)に転落。株価は800円前後(現在の調整前ベースで約160円台)まで急落し、2012年に続く歴史的な大底を形成しました。
❹【天井】2023年〜2024年初頭:コロナ後の経済再開と構造改革期待
- 当時の状況: コロナ禍からの経済再開、自動車生産の回復、歴史的な円安が追い風に。さらに日本製鉄が米国の「USスチール」買収を発表し、世界中の投資家の注目を集めました。
- 業績と株価: 連結純利益が過去最高水準となり、株価は一時3,800円前後(現在の調整前ベースで約700円台半ば)まで急騰しました。
❺【次の大底へ向かう調整フェーズ】現在、そして2026年以降の戦略
お祭り騒ぎは終わり、現在は中国の不動産不況やコスト高によって再び元気がない状態です。そして、もし今年「AIバブル」が弾けたらどうなるか?
市場の全面安に巻き込まれ、さらに売られる可能性が高いと考えます。 その場合、私たちは「2段階の大底」を見極める必要がありそうです。
- 第1の底(株価のバーゲンセール): バブル崩壊直後、市場のパニックで理不尽に急落した瞬間(30〜40%の下落を想定)。
- ここで、最初の課題である「バリュートラップ株(ただ衰退するだけのダメ株)」を避ける技術が必要になります。その強力な味方が、例えば日本製鉄などが導入している「下限配当(業績に関わらず年間24円の配当を維持するという約束)」のような仕組みです。これがある銘柄は、株価が下がれば下がるほど利回りが跳ね上がるため、パニック時の強烈な「命綱」になります。
- 第2の底(実態の暗黒期): その後、リアルな不況(自動車減産など)が押し寄せ……ここが本命の仕込み場になります。(50〜60%の下落を想定)
「株価の底」と「業績の底」が時間差でやってくる。想像するだけでお腹が痛くなりそうな激しさですが、20代に半導体業界で暴力的な天井と大底を見てきた私としては、「シクリカル株ってそんなもんだよな・・・」とも感じます。
まだ底の時代は始まったばかり
今年AIバブルが弾けても、それは第1の底に過ぎない。鉄鋼の本当の暗黒期(第2の底)はそこからさらに数年ジリジリ続くはずだから、2028〜2029年頃まで徹底的にアリの如くキャッシュを溜めて待つのが良さそうです。

