【投資コラム②】太らされては出荷される東アジアの輪廻 〜英米の伝統芸「分断統治」とバランサーの掟〜

前回は、スイスやシンガポールのように「見栄を捨ててリングサイドの手数料ビジネスに徹する小国の強さ」をご紹介しました。【投資コラム①】1位を目指さない国が一番リッチ? 〜スイス・シンガポールに学ぶ「コバンザメ型」生存戦略〜

それに比べて、我らが日本。 調子に乗ってはリングに上がり、手痛いKOを食らっては教室の隅に追いやられる……。

「なんで毎回リングに上がっちゃうの?」と思いがちですが、実はこれ、日本のドMな性格だけの問題ではありません。

歴史を俯瞰すると、東アジア(日本・中国・韓国・台湾)は、ある巨大なシステムによって「交代で太らされ、交代で出荷される」無限ループに組み込まれてきたことが見えてきます。

今回は、数百年磨き抜かれたアングロサクソン(英米)の伝統芸、「分断統治(ディバイド・アンド・ルール)」のカラクリを暴いていきます。

1. 永遠の友も敵もいない――大英帝国の「バランサー」の掟

この冷徹なゲームの基本ルールを発明したのは、かつて世界を牛耳った大英帝国の首相、パーマストン子爵です。彼は19世紀にこう言い放ちました。

「我が国には永遠の友も永遠の敵もいない。あるのはただ一つ、永遠の国益だけだ」

島国イギリスは、人口も陸軍力もヨーロッパ大陸の大国(フランス、ロシア、ドイツ)には敵いませんでした。もし大陸の誰か一国が強大化してヨーロッパを統一してしまえば、イギリスは一瞬で飲み込まれてしまいます。

そこで編み出されたのが、「バランサー(天秤の操作役)」という立ち回りでした。

  • フランス(ナポレオン)が調子に乗ったら: プロイセン(ドイツ)やロシアに金と船を渡してフランスを叩かせる。
  • ロシアが沈んだ後、フランスがまた肥大化してきたら: 昨日までの敵だったフランスと同盟を組んでロシアを叩く(クリミア戦争)。
  • ドイツが急成長して脅威になったら: またロシアやフランスと組んでドイツを挟み撃ちにする(第一次世界大戦)。

海を隔てた安全圏から、「2番手にエサを与えて1番手を殴らせ、1番手が倒れたら今度は育ちすぎた2番手を叩くために3番手を育てる」。

これこそが、大英帝国の血統に刻まれた「ディバイド・アンド・ルール(分断統治)」の神髄です。

2. 戦前から続く、東アジアの「養豚場サイクル」

このゲーム、舞台をヨーロッパからアジアへ、手段を軍隊から「半導体やサプライチェーン」に変えながら、今も寸分違わぬ輪廻が繰り返されています。

まさに東アジアを舞台にした「養豚場サイクル」です。

【アングロサクソンの養豚場サイクル】
① 脅威を叩くため、別の国にエサを与えて太らせる(当馬の育成)
② 太りすぎてNo.2になったら、ルールを変更して叩き潰す(出荷・解体)
③ 次の当馬を太らせて、前の国を干し上げる
④ 繰り返す

【1900〜1930年代:初代・日本豚の肥育と出荷】

ロシアの南下を止めたいイギリスは、日本と「日英同盟」を結び、資金と軍艦を融通して「番犬(当て馬)」として日本を育てました。 日露戦争に勝利した日本は調子に乗り、繊維産業などの圧倒的な価格破壊力で世界市場を席巻します。

しかし、「白人支配を脅かすNo.2」として肥え太りすぎたため、アングロサクソン勢力はブロック経済で日本を締め出し、最後は「ABCD包囲陣(石油・鉄の禁輸)」で兵糧攻め。 追い詰められて逆上した日本は正面衝突を選び、一億玉砕・原爆投下によって肉体も骨も完全に解体されました。

【1950〜1980年代:二代目・日本豚の再肥育と出荷】

第二次世界大戦後、今度は冷戦下でソ連・共産圏に対抗するため、アメリカは日本を西側の「防波堤兼・工業工場」として再肥育します(高度経済成長)。

しかし、真面目すぎた日本はまたしても肥え太り、半導体の世界シェア5割超を独占。「Japan as No.1」とお立ち台で踊り出しました。 当然ジャイアン(アメリカ)の怒りに触れ、「日米半導体協定」と「プラザ合意」という強烈な鉄拳を食らうことになります。

【2000〜2010年代:日本を干すための「当て馬」ならぬ「当て豚」たちの肥育】

ここからが本当にシステマティックです。 ジャイアンは、日本を完全に干し上げるための当て馬として、韓国(サムスン)に技術を流し、台湾(TSMC)に製造を丸投げし、中国をWTOに加盟させて「世界の工場」として甘やかし、巨大化させました。

テレビ、パソコン、スマホ、液晶、半導体……次々と日の丸ビジネスを奪われた日本は、教室の隅っこに引きこもるしかありませんでした。

【2020年代〜現在:第二世代・第三世代の収穫祭と原点回帰】

そして今、何が起きているでしょうか? 今度は育てた「当て豚」たちが肥えすぎました。

中国はハイテク覇権で牙を剥き、台湾は最先端半導体の9割を握る急所になり、韓国は肥大化して中国とズブズブに。 焦ったジャイアンは再び棍棒を振り回し、中国には超高関税と輸出規制、台湾や韓国には「アメリカに巨額の工場を作って上納しろ」と胸ぐらを掴み始めました。

そして、隅っこで干からびていた日本にこう声をかけてきたのです。

「おい日本、お前30年間反省して大人しくしてたよな? 肥えすぎたあいつらを締め上げたいから、お前の安全な島(熊本)にTSMCの工場を置くぞ。ついでにラピダスも支援してやるから、またちょっとだけ働けや」

パーマストン子爵が草葉の陰でニヤニヤ笑っているのが見えるようです。

友情も愛情もありません。「あるのはただ一つ、永遠の国益だけ」なのです。

3. 分断統治が一番喜ぶ「檻の中のケンカ」

この分断統治がもっとも完璧に機能するのは、どんな時でしょうか?

それは、檻の中の豚同士が「隣の豚のほうがエサを多く食っている!」「あいつが俺たちのパイを奪った!」と、水平方向でお互いに憎み合っている時です。

かつてイギリスがインドを統治した際、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒を意図的に反目させて団結を防いだ手口(1905年ベンガル分割令)とまったく同じです。

支配者がもっとも恐れる悪夢はいつの時代もただ一つ。 「対立させられていた当事者同士が、『あれ? 俺たち闘鶏の檻の中で、上から操られて戦わされているだけじゃね?』と気づくこと」なのです。

他国がアメリカに締め上げられているのを見て、「ざまあみろ」と留飲を下げている場合ではありません。私たちも同じ豚ちゃんなのですから!!

「あ、次はウチにエサを撒いて、あいつらを牽制するターンなんだな」と冷徹に構造を見抜かなければ、また同じ屠殺場へ直行することになります。

次回予告:なぜ日中韓台はリングに上げられるのか?

では、なぜ東アジアの国々ばかりが、こうも簡単にジャイアンのチェス盤に乗せられてしまうのでしょうか?

スイスやシンガポールのようにはいかない「東アジア特有の宿命」とは?

そして、ふたたびエサを撒かれ始めた日本は、どうすれば「太らされず、出荷されず、したたかに生き残る」ことができるのか?

次回、【第3回:なぜ日中韓台はリングに上げられるのか? 〜「ドM職人」がジャイアンの鉄拳をかわす方法〜】で、日本の具体的な生存ルートを解き明かします!

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