利益率1.98%でもビクともしない。【2908フジッコ】の財務に隠された「昭和のおばあちゃん精神」と静かな自信

シケモク企業図鑑

フジッコ(2908)の財務プロファイル

  • 自己資本比率: 86.3%
  • 利益剰余金: 約624億円
  • 有利子負債: 0
  • 営業キャッシュフロー: 44億円
  • 現金同等物: 116億円
  • 業績: 概ね横ばい
  • 営業利益率(物価高から回復へのプロセス):
    • 2024年:2.75%
    • 2025年:1.98%
    • 2026年(予):2.93%
    • 2027年(予):3.16%
  • 配当利回り: 2.79%
  • PBR: 0.68
  • 社長: 福井 正一 氏(1995年入社、2004年社長就任)。フジッコ創業者・山岸八郎の長男。中央大学理工学部を卒業後、東北大学大学院の農学研究科(修士課程)を修了。さらに、後年(2007年)には京都大学大学院にて博士(農学)の学位を取得。

社長というよりは「学者肌」の人物です。人工甘味料の不使用や、自社での厳しい残留農薬検査などをいち早く導入する目線はまさに理系。昆布や大豆といった日本の伝統的な和食素材を、ミネラルや食物繊維、植物性タンパク質が豊富な「健康食材」というアングルから捉え、小さなパウチでお馴染みの惣菜シリーズ「おかず畑」などをプロデュースしています。

原材料の仕入れ先に徹底してこだわる姿勢には、緻密な理系の誠実さが感じられます。また、社員に対しても福利厚生を充実させ、退職後の再雇用を促すなど、働きやすい環境づくりにも力を入れているようです。

昭和のおばあちゃんのような、爆厚の安心感

「フジッコのおまーめさん🎵」のCMキャッチフレーズは、昭和生まれの私の耳にも深く残っています。(今はもうテレビ自体をほとんど見なくなってしまいましたが……。)

そんなフジッコの財務を覗いてみてびっくりしました。ものすごく健全で手堅く、コツコツと「タンス預金」で大金を貯め込んでいる昭和のおばあちゃんのような会社が、本当に日本にはたくさんあるのだなと改めて実感します。

いやー、それにしても食品業界の利益率の低さには驚きを隠せません。野菜を仕入れて調理し、綺麗にデザインされたパウチに詰め、CMまで流して、たった「1.98%」しか利益が残らないなんて……。もし私が町のお惣菜屋さんなら、あまりのはかなさに絶望して泣いてしまいます。

食品業界の利益率って、どこもこんなものなのでしょうか? 気になって他の会社も比較してみました。

1. 利益率が低いグループ(2%〜4%前後)

フジッコと同じように、「毎日消費されるけれど、他社との差別化が難しく、原材料費の割合が高い」ジャンルです。

  • 山崎製パン: 約3.5%〜4%
  • キユーピー: 約5%前後(時期により4%台)
  • ハム・ソーセージ大手各社: 約2%〜3%

これらは小麦、大豆、卵、お肉といった「相場の影響をモロに受ける生の原材料」を大量に使うため、原価が高くなりやすい特徴があります。また競合が多いため簡単に値上げができず、どうしても薄利多売の構造になりがちです。

2. 利益率が高いグループ(8%〜10%以上)

食品系の中でも、驚くほど高い利益率を叩き出している企業たちです。共通するのは「強いブランド力(代えがきかない)」や「海外展開」、あるいは「独自の技術」を持っている点です。

  • 味の素(約9%〜10%): 調味料だけでなく、アミノ酸の技術を応用して半導体材料(絶縁精密フィルム)などを作っており、これが凄まじい利益を生んでいます。
  • 日清食品ホールディングス(約9%〜10%): 「カップヌードル」という世界的な超強力ブランドがあり、海外でも高く売れるため利益率が高くなります。
  • キッコーマン(約8%〜10%以上): 実は売上・利益の多くを「海外の醤油(Soy Sauce)ビジネス」で稼いでおり、日本国内の薄利多売とは違う次元で商売をしています。
  • 東洋水産(約15%以上): 「マルちゃん」の即席麺がアメリカやメキシコで圧倒的なシェアを持っており、海外事業が絶好調なため業界トップクラスの利益率を誇ります。

3. 国内の「中堅・老舗」ならではのジレンマ

フジッコのような、主に日本国内のスーパーのお惣菜コーナーや和食の棚を支えている中堅メーカーは、今まさに以下のようなジレンマと戦っています。

  • 海外に逃げにくい: 「お豆」や「昆布」は日本の食文化に深く結びついているため、いきなりアメリカやヨーロッパで爆発的に売るのが難しい。
  • スーパー(流通)の立場が強い: 売り先である大手のスーパーや量販店の力が強いため、「原材料が上がったので明日から30円値上げします」と言っても、なかなか簡単には認めてもらえない。

やはり、国内向けの仕事はなかなか厳しい(しょっぱい)のですね。日本は30年間ずっとデフレでしたから。低PBRで放置されるのも無理はありません。でも逆に言うと、よくぞこの環境でこれほどの内部留保を貯め込んできたなと、そのストイックさと社員さんの辛抱強さには驚愕します。日本人は本当に粘り強い。

アドレナリン系じゃない、フジッコの矜持

私は仕事の関係で北米の西海岸とやり取りすることもあるのですが、あちらでは今「ビーガン食」が大きなトレンドになっています。肉などの動物性食品を一切使わず、植物由来の材料だけでタコスやバーガーを食べるスタイルです。あの文化圏の人たちなら、フジッコが長年培ってきた大豆料理なんて、ものすごく気に入りそうな気がします。

現在の株安・円安(1ドル160円台)の環境を活かし、「日本の健康食」として海外に打って出るのも面白そうだな、なんて妄想も膨らみます。

ただ、フジッコのデザインや商品ラインナップを見ていると、流行り廃りを追いかけるよりも、手堅く日本国内で消費されるものを品質重視で積み上げていく社風なのだろうな、という気もします。

実際、ラインナップやパッケージを見渡すと、

  • 介護食
  • あまりたくさん食べられない団塊の世代
  • 共働きの親のもとで育つ小さな子どもたち
  • 健康志向の若者の「腸活」
  • 高齢者のプロテイン(タンパク質)不足を補うスープ

など、日々の庶民の暮らしと健康にそっと手を差し伸べるような、優しい視線が至る所に感じられます。

「派手な演出で消費者を煽る」とか「濃い味付けで中毒にする」といった、いわゆるアドレナリン系のビジネスではありません。 大量消費を煽るグローバリズムの世の中でも、ブレずに自分たちのポジションを保ち続けている姿は本当に立派です。

逆にいうと、現在の激しい物価高の世の中で、低い利益率に耐えながらも高い自己資本比率でじっとこらえている姿には、「めちゃくちゃ儲かるわけではないけれど、食品は絶対に必要とされ、買ってもらえる。絶対にゼロにはならない」という静かな自信すら感じます。

年老いた旦那や息子夫婦、孫の健康にいい食事を、毎日まごころ込めて作る。そして毎年少しずつ、息子からの仕送りや年金、へそくりを実家のタンスに貯金していく……。

この、どこまでも堅実で愛に溢れた「昭和のおばあちゃん精神」こそが、激動の時代でも決して揺らがないフジッコの本当の強みなのだと感じました。

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