「あなた、そういう話ほんと好きよね〜(やれやれ顔)」
「その話はいいから!」
「すごいですねぇー(やれやれ顔)」
長年、私が投資や社会の構造、会社経営の話をするたびに、夫から繰り出されてきたこの塩対応の数々。
言われるたびに、私は内心ビクついていました。
「私って、夫から『銭ゲバで下品な女』と思われてるのかしら……」
「社会とお金の仕組みを面白がる私は、浅ましいと軽蔑されているのかしら……」
と、勝手に傷つき、勝手にしょんぼりしていたのです。長年。
しかし先日、ついにこの「やれやれ顔問題」の根本原因を白日の下に晒す大事件が勃発しました。
……結論から言うと、夫が私を軽蔑していたわけではなく、私の投げた球が「時速160kmの超絶変化球」すぎて、夫がミットごと吹き飛んでいただけだったのです。
高専の屋上から、いきなり国家構造改革へワープする妻
事件の発端は、中1の長男と高専(高等専門学校)の見学に行った日のこと。
出張から帰ってきた夫に、私は見学の様子をルンルンで報告していました。
「高専って面白くてね!企業のネーミングライツでJX金属とか日本製鉄が資金を出して施設を改修してるのよ。でもね、校舎の屋上の防水シートが切れててさ」
ここまでは普通の学校見学レポです。しかし、私の多動な脳内リンクがここから猛スピードで暴走を始めます。
「これってやっぱり小泉改革以降、独立行政法人化で予算が削られたしわ寄せがインフラの現場に出てるよね。郵政や道路公団は民営化できたけど、JAの岩盤組織にはメスを入れられなかったし、安倍元首相も切り込もうとして撃たれちゃったし……(陰謀論だけどね!笑)あの組織のアンタッチャブルさってすごいよね〜」
学校の屋上のヒビから、小泉構造改革、独立行政法人、民営化、果ては銃撃事件のウラ構造まで、わずか30秒でワープ。
私としては「身近な風景から社会とお金の流れが見える!楽しい!」という知的エンタメ雑談のつもりでした。
すると、夫がいつもの「あの顔」で言ったのです。
「……あなた、そういう話ほんと好きだよね(やれやれ顔)」
そして突然始まる、妻の「事情聴取」
いつもなら「あ、引かれたかな」と口を閉ざすところですが、この日の私は違いました。
今年から投資ブログを書き始め、四季報をめくっては低PBR企業を分析し、マクロ経済の動向と息子の適性を掛け合わせて緻密に進路を逆算する日々。目と耳と勘をフル稼働させて高専まで行ってきたガンギマリの私に、その「やれやれ」は何事か!?
私の脳内・敏腕監査役が静かに立ち上がりました。
「え? 『そういう話』って具体的に何の話? 陰謀論? 政治ゴシップ? 私、めったにゴシップは話さないけど、無自覚なら直したいから具体的に教えて?」
感情ゼロ、事実のみを淡々と求める私。
夫、明らかに動揺。
夫:「ゴシップじゃなくて、あそこの会社はやばいとか、そういう話……。別にしょっちゅう言ってるとは言ってないよ!紛らわしかったらごめんなさい!」
出ました、とりあえず謝って煙に巻く作戦。だが今日のガンギマリの監査役は逃がしません。
私:「謝って欲しいわけじゃないの。あなたが何か悪いことをしたと責めているわけじゃないから。私がいつヤバい会社の話をしたかが、知りたいだけ。財務のいい優良企業しか調べてないし、ヤバい会社なんて決算の数字見た瞬間切るから話題にする時間すら無駄だし。……で、いつ私が、いつあなたにどのヤバい会社の話をした?」
夫:「うっ……」
完全沈黙。具体例など出るはずもありません。
なぜなら彼は、飛んできた情報の濁流に脳がフリーズし、とりあえず相手をいなして会話を強制終了するための「緊急停止ボタン」として口走っただけだったからです。
暴かれた「やれやれ」の正体
さらに詰め寄る私。
私:「私のこと、お金の話ばかりする銭ゲバ女だと思って軽蔑してるの?」
夫:「そんなことないよ!!……何を言ってるのか、意味がわからないだけだよ(泣)」
私:「……え? 意味が、わからない?」
夫:「うん」
私:「わからないから、適当にいなして終わらせようとしてたの?」
夫:「…………(猛烈に気まずそうな顔)」
長年の謎が、ガラガラと音を立てて解けた瞬間でした。
軽蔑されていたわけでも、下品と思われていたわけでもありませんでした。
ただ単に、
- 妻の話題がマニアック&スピード違反で、シンプルに意味がわからない
- でも「わからない」と素直に言うのは、無類の負けず嫌いな男のプライドが許さない
- 「あーハイハイ、君はそういうの好きだよね」と一段上からいなすポーズをとって、なんとか自分のメンツを保ちつつ会話を切り上げたかった
という、なんとも不器用で人間くさい防衛反応だったのです。
「被害者」は夫のほうだったかもしれない
「なんだ、そうだったのか……!」と脱力すると同時に、じわじわとおかしくなってきました。
私は長年、「夫に引かれている、冷たい目で見られている」と悲劇のヒロインぶっていましたが、夫の立場になってみればどうでしょう。
仕事から帰ってきて「息子の学校見学どうだった?」と聞いただけなのに、いきなり妻が目の前でシャカシャカとマクロ経済とインフラ民営化のフリップをめくり出し、時速160kmの剛速球をバコ、バコ投げ込んできたのです。
キャッチできるわけがありません。ミットどころか体ごと後ろのフェンスに激突するレベルです。
彼からすれば、
「普通に『校舎がちょっと古かったよ〜』くらいでいいのに、なんで国家予算の話になってんの!? 怖い! 意味わからん! でも『わからん』って言ったら負けた気がする! とりあえず『あなたも、好きね〜』で流しとけ!」
という、必死の防衛戦だったわけです。
ごめん夫。あなたが悪者なんじゃなくて、単に私のオタク速度が暴走機関車すぎたんだね。
我が家の平和を守る「安全運転」
とはいえ、私にとってもこの「社会や経済の裏側を覗いて構造を分析する」というのは、息をするようにやってしまう止められないサガ(性分)。やめろと言われても脳が勝手にリンクを繋げてしまうのです。
だから決めました。
「この時速160kmの剛速球は、家庭内で投げるのをやめよう」と。
夫とキャッチボールをするときは、お天気の話、子どものかわいいエピソード、今夜の晩ごはん、そして彼が気持ちよく話せる話題という「ふわふわのゴムボール」を優しく下手投げすることにします。
彼も自分の好きな分野の仕事を一生懸命やって、家族を大事にしてくれる優しい夫。そこにわざわざ理解不能な経済マニアック砲を豪速球で撃ち込んで撃沈させる必要はどこにもありません。
そして、私のこの止められないオタク思考剛速球は――
このブログの読者の皆さんや、受け止め合える投資仲間たちに向けて、全力で投球していこうと思います(笑)。
長年のモヤモヤが晴れて、我が家には今日も平和な(そして速度調整された)会話が流れています。
狂気の暴走機関車な私ですが、これからもどうぞお付き合いください!

